子どもとバレエ：小さな頃から始めることのメリットと注意点

はじめに：バレエは人生の“土台”を作る

バレエは、音楽と共に身体を動かす美しい芸術であると同時に、礼儀・集中力・忍耐・自己表現といった、人として大切な要素を育む学びの場でもあります。
近年、バレエを習わせたいと考える保護者の方が増えており、実際に3歳〜5歳という早い段階からバレエを始める子も珍しくありません。

では、子どもがバレエを習うことにはどのようなメリットがあり、注意すべきポイントは何なのでしょうか？
今回は、バレエ教師・保護者・教育者の視点から、子どものバレエとの向き合い方について深掘りしていきます。

1. バレエが子どもにもたらす5つのメリット

① 姿勢と柔軟性の習慣が身につく

幼少期からの正しい姿勢は、骨格の成長・内臓の健康・集中力に良い影響を与えます。
また、柔軟性はケガの予防やスポーツ全般の基礎にもなり、バレエで身につけた体の使い方は一生ものです。

② 集中力と自己コントロール力が高まる

• 音楽に合わせて動く
• 順番を覚えて実行する
• 指導者の言葉を正確に理解し動く

これらを通じて、子どもたちは遊びながら集中力やルールを守る力を自然に習得します。

③ 礼儀・感謝の気持ちを育てる

バレエでは、レッスンの始まりと終わりに「お辞儀（レヴェランス）」を行います。これは、先生や音楽、空間への敬意を表すもの。
自然と礼儀や思いやりの心が育つことも、保護者から高く評価されています。

④ 自己表現の楽しさを知る

子どもたちは、物語や音楽に合わせて体を動かすことで、言葉以外のコミュニケーションに触れます。
「自分を表現できる喜び」は、自己肯定感を高め、心の成長につながります。

⑤ 舞台経験が“人生の財産”に

発表会やコンクールなどで、たくさんの人の前で踊る経験は、プレゼン力や人前で堂々とする力を育てます。
一度でも「舞台に立った経験」は、その後の人生で大きな自信となって返ってきます。

2. いつから始めるのが良いのか？

一般的には「3歳〜5歳」がおすすめ

• 集団行動になじみやすい年齢
• 音楽に合わせて自然に体を動かす楽しさを感じやすい
• 柔軟性が高く、基礎を吸収しやすい

もちろん、6歳以降でも遅すぎるということは全くありません。
その子の性格や運動経験に合わせて、ベストなスタート時期を見極めることが大切です。

3. 注意したいポイント：無理をさせない、比べさせない

子どものバレエ教育で一番気をつけたいのが、**「焦らない」「比べない」**という姿勢です。

■ 成長には個人差がある

• 柔軟性の高い子
• 集中力が続く子
• 感情表現が得意な子

どの力も成長のタイミングはバラバラ。焦って詰め込みすぎると、身体にも心にも負担がかかってしまいます。

■ コンクールや級の進級にとらわれすぎない

競争がモチベーションになる子もいれば、プレッシャーになる子もいます。
「うちの子はまだこのレベル？」「隣の子はもうトウシューズ？」と比べるのではなく、“昨日より1歩でも前に進んだか”を大切にする視点が重要です。

4. 親のサポートで差がつく！3つのコツ

① 声かけは「成果」ではなく「努力」に注目

×「今日はうまく踊れた？」
◯「よく集中してたね」「諦めずに練習して偉かったね」

結果よりもプロセスを認めることで、子どもは挑戦し続ける力を身につけます。

② バレエ以外の生活習慣を整える

• 睡眠
• 食事
• 姿勢
• 心の安定

バレエで育てた力を支えるのは、日常の生活習慣です。「レッスン外」も含めて整えていくことが、成長の土台になります。

③ バレエを“好き”でいられる環境づくり

• 無理やりやらせない
• 「楽しかったね」と共感する
• 発表会は家族で応援

子どもにとって、バレエは“好き”であることが最大の原動力です。

5. バレエを通して子どもに贈る“生きる力”

子どもがバレエを学ぶことは、将来プロのダンサーになるためだけではありません。

• 挨拶ができる
• 自分の気持ちを表現できる
• 困難に向き合う力がある
• 仲間と協力する
• 自分を大切にできる

そうした**「人生を生き抜く力」**を、バレエは自然と育ててくれます。

おわりに：親子で楽しむ“踊る”日々を

バレエは、子どもだけのものではありません。
一緒にレオタードを選んだり、発表会を観に行ったり、家で練習を見守ったり…バレエは親子で楽しめるコミュニケーションの宝庫です。

もしお子さんが「やってみたい」と言ったら、ぜひ背中を押してあげてください。
そして、親も一緒に楽しむ気持ちを忘れずに。
バレエは、子どもの成長と共に、家族の思い出を美しく彩ってくれるはずです。